組織論

異色アスリートがDIO編集部にやってきた!「エンゲージメントでチームを強くするには、どうすればいいですか?」(人事・マネージャー向け 組織改善の”Do”がみつかるメディア「DIO」より)

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第3回知的体育会サロンにご参加頂いたアトラエ様が「エンゲージメント」をテーマに、井筒陸也氏にインタビューをおこなった。元Jリーガーの井筒氏はmemeに記事を寄稿頂いている。

前回のサロンの内容との共通点やmemeとの親和性の高さから、アトラエ様にご快諾頂き今回のインタビュー記事をmemeでも転載させて頂くことになった。

転載元:https://wevox.io/media/story-athlete/

©️TOKUSHIMA VORTIS

井筒陸也氏のプロフィール

関西学院大学卒業。大学時代サッカー部のキャプテンを務め、総理大臣杯優勝、インカレ優勝など日本一を含む4冠を達成。卒業後、J2の徳島ヴォルティスに加入。合計54試合に出場し、選手会長を務める。2019年1月に25歳の若さで現役を引退。現在はCriacao Shinjukuに所属しながら、Jリーガーを中心としたコミュニティ作りに励む。

 

井筒陸也さんは、Jリーグ選手時代から組織マネジメントに強い興味を抱き、ブログ「敗北のスポーツ学」で自身の考えを発信しています。その内容は、様々なビジネス理論からヒントを得ながら、スポーツにおける組織論、キャリア論、仕事論などを綴る、骨太なものばかり。

そんな井筒さんからの「エンゲージメントや組織論について、アトラエさんと対談をしたい」というリクエストをきっかけに、wevox開発責任者/DIO編集部の森山雄貴との対談が実現。井筒さんが当時感じていたチームづくりへの課題感、アスリート選手としてのキャリア形成、本当に強いチームの姿など、様々なテーマで2時間近くに渡り行われたディスカッションを余すことなくお伝えします!

 

サッカー選手の離職率40%?

 

森山:今日は元プロサッカー選手であり、現在はビジネスの世界でもチャンレンジしている井筒陸也さんと、エンゲージメントをキーワードにスポーツ、ビジネスの垣根を越えた組織論について話をしていきます。

井筒:よろしくお願いします。

森山:まずは私から簡単に自己紹介を。私はアトラエという会社で、「wevox」の開発責任者をやっています。wevoxは従業員への簡単なサーヴェイによって、エンゲージメントスコアを計測できるサービスです。今は一般企業の導入が多いですが、ビジネスだけでなく、スポーツなどいろいろな領域の組織にも効果を発揮するサービスでもあると思っています。

井筒:エンゲージメントという概念には興味がありますし、そもそも私はアトラエさんそのものにもすごく興味がありました。上下関係がないフラットな組織だと知り合いから聞いてから、どういう組織なんだろう? とずっと気になっていたのです。ですので、今日はこちらかもいろいろと質問させてください。

森山:ありがとうございます。

井筒:では、私も自己紹介を。私は3年間、徳島ヴォルティスに所属してポジションはDFでした。その前は関西学院大学で大学サッカーをやり、主将を務めながら日本一を含む4冠を達成しました。リーダーシップや組織マネジメントにはずっと強い関心を持っていて、考えや思いを「敗北のスポーツ学」というブログで綴っています。

森山:読ませていただきました。深い考察が多く、私も参考になることがたくさんありました。

井筒:ありがとうございます。ビジネス書はたくさん読んでいて、「敗北のスポーツ学」でも紹介していますが、「スタンフォードの自分を変える教室」(大和書房)や「ブルー・オーシャン戦略―――競争のない世界を創造する」(ダイヤモンド社)などは自分に大きな影響を及ぼしました。

森山:サッカー選手とは思えないラインナップですよね(笑)。

井筒:はい(笑)。ビジネスもスポーツも共通点はたくさんあると思っていますから、ビジネス書からも多くのことを学べます。

サッカーでは、一流の選手ばかりを揃えたのに勝てないことはよく起こります。J2でプレイしていても、連勝した後に急に連敗してしまうことは珍しくない。監督や選手を変えればいいと言う人がほとんどですが、私は「いいチーム」をつくれば、勝ち続けられると思っているんです。今日はそうしたいいチームをどうすればつくれるのか、何かしらヒントを得られるといいなと思っています。

最初に、エンゲージメントという概念を説明していただいてもいいですか?

森山:エンゲージメントとは「何かと自分」がどれくらい密接に紐付いているかということを意味します。wevoxでは、組織と仕事に対してエンゲージメントがあるという考えのもとにサービスを設計しています。大まかに、仕事エンゲージメントは、仕事に対するやりがいを感じ没頭しているかどうか。組織エンゲージメントはその会社にいる意義を理解して、自主的に貢献したい、という意欲を持てているかを示しています。

井筒:へえ、組織と仕事で分けているんですね。

森山:ビジネスの場合、よくあるのは外資系のコンサルタントが仕事はバリバリやるけど、組織へのエンゲージメントは低くて、2~3年経つと会社を辞めて独立しちゃうタイプ。逆に日本企業によくあるのは組織へのエンゲージメントは高いんだけど、「仕事はつまんない」という社員が多いタイプです。前者は会社にとってリスクが大きいし、後者は個が活き活きしていない。だから、組織、仕事どちらのエンゲージメントも大事だよね、という思想のもとwevoxは成り立っています。

井筒:面白い。一言でエンゲージメントと言っても、いろいろな性質があるんですね。エンゲージメントが高いと、会社にとってはどのような効果があるのでしょうか?

森山:離職率の低下には効果的で、wevox導入企業にも、離職が減った実例が多くあります。それから、エンゲージメントが高まると、収益性、生産性が高まるというアメリカの調査会社ギャラップのデータもあります。例えばスターバックスのように、店員一人ひとりが活き活きと働いていると、それがホスピタリティーやサービスのクオリティに直結する。それによってファンが増えて、売り上げが上がる。そういった効果がエンゲージメントにはあると言われています。

私から聞きたいのは、サッカー選手にとってのエンゲージメントってどういう捉え方になるんだろうということです。言葉を選ばずに言うと、移籍が多かったりして、組織エンゲージメントは低くて、仕事エンゲージメントは高い、というイメージなんですが

井筒:おっしゃる通り。まさにそうですね。組織、仕事のエンゲージメントという観点からいくと、仕事エンゲージメントの比率が大きい人がほとんどだと思います。組織エンゲージメントはもしかしらたゼロの人もいるかもしれない(笑)。離職率という表現はしないですが、1シーズンごとに他のチームに移籍する選手の割合は30~40%ぐらいになると思います。

森山:一般企業だと10%弱ぐらいが平均的な離職率です。性質が違うので、単純比較はできないと思いますが、それでも毎年30~40%の人が移籍をしているのは多い印象です。

 

「なぜ、自分はこのチームにいるのか?」

 

井筒:組織エンゲージメントを考える上ですごく難しいのは、例えばチャンピオンズリーグを見ると、選手はレベルの差を歴然に感じるんです。どれだけ綺麗事を言っても、レベルが下のところで我々はプレイしていると感じる瞬間はある。そうした中で、J2のチームは他とどう差別化して、組織エンゲージメントを高めていけばいいのか。一般企業だと、売り上げとは別に、他にはないユニークなサービスに携われたり、福利厚生が充実していたりとか、差別化ができますよね。

森山:確かに難しい問題ですが「なぜ、この組織、チームに自分がいるのか」をメンバーの一人ひとりが明確に語れるかどうか、がエンゲージメントには大きく関わってきます。一般企業だって、上下関係はあるんですよね。Tech系企業だと、GoogleとかFacebookなどのシリコンバレー企業、国内だとメルカリとかと比較されるとやっぱり上下関係はどうしたって出てくる。そうした中で、どれだけその会社にいる意味を語れるか。

例えばZOZOは、ECサイトという並びで考えると、Amazonや楽天など、さらに上がいます。だけど、ZOZOECサイトとしてどうのこうのではなくて、「楽しく働く」というビジョンを掲げているんです。そんな会社に自分たちはいて、だからこういう仕事をしたいんだ、と一人ひとりが語れる。そういうことをZOZOはやろうとしているんです。

井筒:その話も面白いですね。それは、社員が自分たちで考えて、そうした意味づけを行っているのか、会社が意味を与えているのか。どちらなんでしょうか?

森山:アトラエは前者ですし、後者の会社もたくさんあります。これはどちらがいいかどうか、ではなくて経営者が持つ性質とか会社が持つ文化にかなり依存するでしょう。

井筒:スポーツでは、選手に対しては勝利が至上命題としてあります。もちろん、それはスポーツの醍醐味ですし、そこは変わらないでしょう。しかし、それ以外の価値観をなかなか感じづらいのも事実です。「地元でサッカーをしたい」「あの監督のもとで人間的に成長したい」とかそれぞれの価値観を持って、「だからこのチームに所属しているんだ」と語れる選手はまだまだ少ないな、と今の話を聞いて思いました。

森山:青山大学駅伝部の原監督の講義を以前聞いたのですが、そこでは走り方とかスキルの話は一切出てこなかったんですね。なぜ、このチームにいるのか、なぜこのメンバーなのか、そういったことを学生に重点的に考えてもらうようにしていると話していたんです。それも含めて、共同生活の中でどうやって関係性を築いていくか、そこをドライブさせてチームづくりをしているんです。

だから「このチームに所属する意味」は、仲間との関係性などからも生み出すことは可能だと思います。人間関係は、エンゲージメントの要素としてとても重要ですからね。

井筒:確かに、大学は4年間同じ共同体というのがほぼ約束されているので、そうしたアプローチも有効かもしれませんね。私も関西学院大学サッカー部の主将を務めていたとき、150人近い部員一人ひとりと話しながら、なぜここでサッカーをしているのかというのを考えてもらうようにしていたんです。

森山:すごい、1on1をやっていたんですね。

井筒:でも、先ほども言ったようにプロだと1年でまた別のチームというのが当たり前の世界。だからと言って「なぜこのチームでサッカーをしているか」を考えなくていいのかといえば、そうじゃないはず

森山:スポーツだと選手の採用をコントロールしづらいのが、もう1つの難しさとしてはある、と思っています。アトラエの場合、採用をすごくこだわっていて、この会社に入る意味を本当に理解してもらって、双方納得した上で採用しているんです。だから、かなり入社前にコミュニケーションを取ります。どれだけスキルが高くても、アトラエのビジョンへの理解や共感がなければ採用しません。

でもスポーツは勝つために、海外からとにかくスキルの高い選手を獲得するのが最優先、みたいな世界でもあるじゃないですか。だから、採用をコントロールしてチームづくりをマネジメントするっていうことが難しい。

井筒:そうなんですよね。確かに、強い選手が獲れればいいという風潮はあります。それはそれでもちろん大事なんですけどね。ビジョンも大事だというのも分かるし

FCバルセロナの強さは文化から来ている

 

森山:チームのビジョンを共有する場ってあるんですか? 例えば会社でいうキックオフミーテォングでCEOがその年のスローガンを発表する、みたいな。

井筒:はい、1年の初めに目標を共有する場はありますね。主にフロントが主導して、チームによっては監督も入って目標は決めています。

森山:選手側が、そうした目標やチームのビジョンをどれくらい自分ごととして捉えるのかも大事なのですが、そこはどうでしょうか。例えば今多くの企業が導入を進めているOKRは、会社のビジョンとチーム、個人レベルの目標を結びつける機能としてすごく注目されています。

井筒:まだまだ、そこまで意識はされていないと思います。私は逆に、チームがもっとビジョンの浸透をしてほしいと思っているのですが、珍しいタイプでしょうね。チームがどこを目指しているのか分からないと、選手としてのやりづらさもあるんです。

例えば5年後にJ1定着を目指す。だから今年はこういう選手を獲って、戦術も変える。最初はこの戦術でうまくいかないかもしれないけど、来シーズン以降も視野に入れている」というチームとしてのビジョンがあれば、選手もその中でどうポジションを獲得するのか、どういうプレイを磨いていくのか、が明確になる。

森山:組織エンゲージメントにも、仕事エンゲージメントにも繋がりますね。

井筒:結果すぐにJ1に上がれなかったとしても、チーム側のビジョンを理解して「じゃあこのチームでもう少し頑張るか」という気持ちが芽生えてくるでしょう。選手の人生設計にも大きく関わってきます。

森山:海外だと、ビジョンを大切にするチームはあるのでしょうか?

井筒:海外のトップチームだと100年以上の歴史を持っていたりするので、ビジョンを超えた文化ができているんですよね。例えばFCバルセロナであれば拠点であるカタルーニャ地方の誇りを持って、自分たちが常に主導権を持ってやっていく、という文化が街全体にある。だから選手は絶対にボールを離さないし、自分たちのペースでボール回しをして攻めていく。

森山:なるほど。街全体の文化がプレイスタイルにまで影響を与えている。すごいですね。

井筒:日本は今それを真似しようとしても、厳しいです。Jリーグもできてまだ20年ぐらいですから。

森山:文化レベルまでは時間がかかるとして、そこに行き着けるように経営側がもっと中長期的なビジョン戦略のもと、チーム運営するのがいいんじゃないか、ということですね。そこが日本のサッカー界には足りてないんじゃないか、と。

井筒:サッカーチームも経営をしなければいけなくて、当然ビジネスの側面もある。経営の思想とサッカーの思想は違うので、うまくバランスを取りながらマッチさせる必要があると思います。 

森山 ワンマンオーナーが仕切るチームの方が、ビジョンは明確だったりするのでしょうか?

井筒:そうかもしれませんね。そのオーナーが、サッカーに対する思想も優れたものを持っているのがベストでしょうね。経営、サッカーどちらに対しても明確で、人を惹きつけるビジョンを持っている。

森山:ビジョンはエンゲージメントを高める上で非常に重要なポイントです。エンゲージメントはビジョンから始まる、という人も多くいます。

井筒:なるほど。やっぱり、ビジョンは大切なんですね。まずは一つ、ヒントが見つかったような気がします。

 

人間関係が原因で失点する?

 

森山:次は、スポーツにおいて重要な、「プレイのクオリティ」にエンゲージメントがどのくらい影響するか、について話してみたいと思います。選手目線だと、シンプルに「エンゲージメントが高いチームは強いのか?」という話になってくると思いますが、このあたりはいかがでしょうか?

井筒:エンゲージメントが高いチームは、強いと思います。というのも、スポーツって本番が始まってしまうと、理性的な判断、政治的な判断をする時間がないんです。

森山:確かに。ビジネスだと、人間関係が悪い人から何か依頼があったとしても、ちょっと一息おいて、自分の中で整理をつけて、仕事に取りかかったりができますよね。サッカーは、それができない。

井筒:そうなんですよ。試合が始まってしまったら、そんなこと考えている余裕なんてない。例えば味方がボールを取られたとき、すぐに切り替えて守備しないと、点を取られるし、自分の評価にも響いてくる。だから、即座に戻ろうとするんですけど、メンバー間や監督との関係がよくなくて一瞬でも「何であいつのために」と考えちゃうと、“1戻りが遅くなる。

森山:面白いですね。でも、絶対あるでしょうね。選手だって人間ですし、感情がプレイに影響を及ぼして当然です。

井筒:サッカーで1秒でも守備への戻りが遅くなるのは、致命的です。守備だけじゃなくて、攻撃への切り替えもそうですし、パスワーク、ボールを持っていないときの動き、など試合の中で、何千回と判断しなければいけないんです。それが11人いて、それぞれの気持ちがバラバラだったら、それは結果を大きく左右してしかるべきではないでしょうか。

だから、自分は日頃からいろんな人とコミュニケーションをとっていい関係を築こうとしますし、試合に入る前にメンタルは整えた上で臨むようにしています。

森山:でも、そういうタイプでない選手も多いでしょうね。直感的に物事を捉える選手もいるでしょうし。海外から来て、文化そのものが違う選手もいる。

井筒:今みたいな考えを、サッカー界で話している人ってほとんどいないのではないでしょうか。少なくとも、プロになってからは周りにそういう観点でチームを捉えている人はいない。

森山:やっぱり、技術力とかフィジカルとかそっちの話が多いんでしょうか。

井筒:圧倒的にそっちです。

森山:井筒さんはそうした考えにどうやってたどり着いたんですか?

井筒:先ほどもお話しましたが、大学サッカー時代に、一人ひとりと面談をした経験がとても大きかった。それまでは、スタンドで応援してくれている大勢の仲間だったのが、一人ひとりがどういう思いでスタンドにいるかが分かることで、すごいパワーに繋がったんです。

そうした思いをピッチに立つ11人とも密にコミュニケーションを取って共有していました。スタンドで応援してくれている他の部員のためにも、戻りをサボるとかビビって消極的なプレイをするとか、絶対できない。そういうチームで戦えたから、4冠という結果に繋がったと思っています。

だから、あのときのチームのエンゲージメントスコアを測ったらすごく高かったと思います。

 

いいチームをどうやって再現するか?

 

森山:そういう成功体験がある中で、プロになった後もずっといいチームはどうつくっていくのかを模索しているんですね。

井筒:同じようなチームをどうすれば再現できるのか。このメカニズムをずっと考えています。

森山:再現性の問題はありますよね。偶然、すごく団結力の高いチームが生まれて、ジャイアントキリングでリーグ優勝しました。でも、選手が引き抜かれて、バランスが崩れて、人間関係も悪くなり

井筒:今度は降格しちゃう。それは、珍しい話ではないです。強かったときの状態をどう維持するのか。メンバーが変わっても、再現できる仕組みが必要。だから、エンゲージメントスコアのように定量的にチーム状態を計測できるサービスはスポーツチームにだって必要なはずです。

森山:そうですね。定性的な観点からの分析だけだと、再現性は持たせにくいのは確かです。いいチームをだったときの定量的なデータ、というのが残っていれば再現性には役に立つ。

井筒:そういったエンゲージメントスコアっていうのは、誰か一人が管理するのがいいんでしょうか?

例えば、サッカーでもフィジカルコンディションを計測するウェアラブルデバイスはすごく進歩していて、担当コーチがその数値を見ながらトレーニング設計をしています。一番いい状態だったときの、コンディション、食事とかも記録されていて、その選手が最高のパフォーマンスを出すために何をすればいいのかを示してくれるんです。

エンゲージメント、という点においてもそうした役割が必要なのでしょうか?

森山:個人的には、エンゲージメントスコアは組織の中心に置いて、みんなでその数値を見ながら「どうしよう?」と考えるのが理想的です。情報をオープンにする。どこまでオープンにするかは、企業によって違いますけど、例えば管理職クラスは他のチームのスコアも含めて全て見られる状態があるとしますよね。

そうすると、数字をもとに管理職の人たちが組織マネジメントについて話をするきっかけが生まれるんです。スコアを見ながら「え、うちのチーム『人間関係』低い。君のチームどう?」とか、そういう会話が起きて「じゃあ1on1始めてみようか」という具体的なアクションに繋がるのが理想です。

そうした会話をする「言い訳」としてwevoxが機能すれば、それだけで役割は達成される、ぐらいにも思っているんです。

井筒:なるほど、そういうことか。そこからさらにスコアを高めるために何をするか、はその人、チームそれぞれのやり方がある。何よりも、そうした議論をする機会がこれまでの会社には足りてなかったということですね。

サッカー界でも、エンゲージメントスコアの結果を見て「組織改善の施策としてこれをやろう」って言える人を増やしていかないといけませんね)。

森山:改善方法は多分、ビジネスでもスポーツの領域でも変わらないと思います。例えば1on1をやったり、イベントをやってサッカーという仕事以外の側面を知る機会を増やしたり。そうしたノウハウをオープンにしながら、どうやって組織づくりを行っていけばいいのかをみんなで考えていこうというのが、このDIOというメディアのスタンスでもあります。

 

井筒選手が考えるいいチーム

 

井筒:うん、やっぱり、スポーツにもエンゲージメントの考え方をどんどん取り入れていかないといけないですね。そういう思いが、いっそう強くなりました。

サッカーの領域ではビジョンや人間関係が結果に与える影響は、すごく小さいと認識されているのが現状です。あくまで肌感覚ですけどほとんどの人が2%ぐらいは影響してるかな?」という認識じゃないでしょうか。

だからこそ私は、50%と言っていきたいですね。エンゲージメントが50%、プレイスキルや戦術が50%。これは、言い続けていきたいと改めて確信しました。

森山:井筒さんがゼロからチームをつくるとしたら、どういうチームを目指しますか? 今日、いろいろ話をした中で、改めて井筒さんにとってのいいチーム像というのは何なのかを、最後にぜひ聞きたいです。

井筒:抽象的になりますけど、いろんな価値観の人がいるけど、根本では繋がっている。そういうチームをつくれないか、というのが自分の中でも大きなテーマとしてあります。多様性チームとしての団結ってある種矛盾しているじゃないですか。そこがうまく両立しているチームが強いんだと思います。

もう少しサッカーの話に近づけると、同じプレイスタイル、同じようなタイプの選手ばかり集めたって、たぶん強くなれないんです。その11人がたとえ世界クラスの技術力を持っていたとしても、です。

森山:冒頭におっしゃっていた、一流の選手ばかり集めても勝てない、というのはそういうことなんですね。

井筒:そうです。アトラエさんは非常に少ない人数で東証1部上場を果たしているし、wevoxのようなプロダクトも生み出している。そういう組織をどうつくっているのか、というのは非常に気になります。

森山:採用に重きを置いている、というのは先ほど話しましたが、入社後のコミュニケーションも同じくらい大事にしています。入社した後でも、「この会社でどうして働いているのか?」という話はしょっちゅうするんです。ミーティングでもしますし、食事や飲み会での何気ない会話の中でもしている。だから、新入社員でも「どうしてこの会社にいて、どうしてこのプロダクトを作っているのか」スラスラ答えられたりする。

井筒:コミュニケーション、その中でも話している内容が面白いですよね。「どうしてここにいるのか?」ということを、同じ組織のメンバーと面と向かって話すのってなかなかないじゃないですか。

森山:それが明確になっている状態が「エンゲージメントが高い状態」でもあると思うんです。我々が理想としているのは、全員が胸を張ってアトラエを「自分の会社だ」と言える組織。そこには強い当事者意識が必要ですし、自律も必要。だから、フラットな組織体制にしているという面もあります。

井筒:なるほど。どうしてこのチームに所属しているのか、腹の底から納得できている。そして、チームのビジョンを理解した上で、様々な価値観、多様性のある選手、監督、スタッフが同じ方向を向いている。

それによって、戦術やトレーニング、選手の補強などの意思決定が明確な基準で行なわれ、試合中のパスやドリブル、守備の連携など細かなプレイでの意思決定も、11人の間できちんとコンセンサスが取れている。そして、全員がチームのために走ること、リスクを負うことに一瞬たりとも躊躇しない。

それこそが、継続的に勝てる「いいチーム」なのでしょうね。今日の会話の中で、考えがまとまった気がします。そういうチームでプレイできるように、これからもいろんなことに挑戦していきたいです。

何か、一緒に取り組みができるといいですね。

森山:ぜひ、何か一緒にやりましょう。今日は私も大変勉強になりました。

井筒:こちらこそ、ありがとうございました!

 

アイキャッチ画像提供:TOKUSHIMA VORTIS

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