サードキャリア

【連載】大手総合商社の「働き方」と登山隊の「登り方」(3/3)

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三菱商事を3年で退社し、人類未踏峰のヒマラヤ・ラジョダダ山への初登頂を成し遂げた萩原鼓十郎氏は語る。

 

登山は、少人数のチームで目標を定め、その目標は他への勝利ではない

 

そんな自論を持ちながら、自らが登山を通して身につけた能力と、大手総合商社で求められた能力には本質的な「ズレ」があったのではと、萩原氏は仮定している。

しかしながら一方で、山岳部の主将であったことをアピールして入社試験にはパスしたのは事実だ。

今回は、どうしてこの「ミスマッチ」が発生したのか、自分の能力がどのように大手総合商社に適していなかったのか、話をうかがった。

 

 

皆さん、こんにちは。

 

萩原鼓十郎です。今回が連載最終回の第3回目になります。

連載楽しみにしてるよ!」と声をかけてくれる方もおり、うれしい気持ちと恥ずかしい気持ちが入り混じっています。

 

第1回では簡単な自己紹介

第2回では商社を辞めるに至った決断の根拠を書きました。

 

今回は、編集部から依頼の通り、商社で過ごした若手時代と山登りの関連性を比較してみます。

 

最初に簡単な断りを入れておくと、商社の業務はご存知の通り千差万別。

人事制度も日々刷新されており、今は違う環境かもしれない&そもそも配属先によって全く環境は異なると思います。大企業こんなとこがだめだからやめてやったぜ!という意図は無く、自分の適性や趣向にあわせて会社を選ばないと損するよというメッセ―ジです。

 

少数精鋭の登山隊の特徴

 

山登りと大手商社の働き方を比較する上で、まずは僕が考える山登りの特徴を書きます。

 

山登りは面白い活動です。なぜなら、勝ち負けがないからです。

ここが他の競技スポーツとは異なります。

皆さんが知っている世界最高峰エベレストを登山家全員が目指しているわけではないのです。(もちろんエベレスト登頂は偉業です!)

 

では、何のためにつらい思いをしてまで山に登るか。

それは「ファン(楽しさ)」のためです。

 

自分たちが楽しいと思えるかどうか。自分たちが登ると決めた山に、自分たちが選んだ仲間と挑み、目標と実際の結果のその差分を楽しむのです。

 

登頂できたとしても危ない場面が多発した山登りでは反省・検討します。

一方、登頂できなくても、やれるだけのことはやった!と清々しく下山する登山もあります。

 

そんな山登りと商社での若手時代における大きな違いは3つありました。

 

1.みんなで目標を立てその差分を楽しむ

2.一人はみんなのために、みんなは一人のために

3.好きな時に、好きな人と、好きな山へ

 

では、ひとつずつ紹介します。

 

みんなで目標を立てその差分を楽しむ

 

僕が所属していたクラブでは年度の初めにその年の冬に挑むかをチーム皆で案を出しあい挑戦する山を決め、そのために必要な訓練を洗い出し、春夏秋冬を合宿・トレーニング計画を作り、年度の終わりである2・3月にチャレンジングな山登りに挑むというサイクルで回っていました。

 

この活動自体は企業活動に似ていますよね。

 

1、2位という順位を争うのではなく、自分たちの年初の目標に対して達成できたか?

ベストケースは無事故で1年生も含め全員で登頂できる事ですが、年によっては登頂しても事故に繋がりかねない場面があった際には合宿後の検討会で対応策や反省点を洗い出します。

 

一方、大企業の場合は、企業としての経営計画等その期の目標を立てられ、部署ごとに全社計画に沿ったものが落ちてくるものの、末端の目と耳に届くときには「他人事」になってしまうように感じました。

これは僕の個人な不徳ですが、人が決めた目標よりも、自分たちで作った目標に取り組む方がアドレナリンも責任感もでてくる性格でした。

 

一人はみんなのために、みんなは一人のために

僕が自分のクラブで好きだったルール・制約のひとつが「全合宿・全員参加」という制約です。毎合宿1週間~1週間、海外であれば1か月超全員で参加します。

 

その制約のおかげで開眼する能力は「最も弱い人をみんなで助ける」という力です。

 

誰か一人でも体力がなくなって歩けなくなったり、途中で事故にあえばチーム全員が下山=敗退することになる。極論、サッカー部は100人中11人(ベンチ入り選手含めても20人程度)が強ければ勝てる一方、山登りは文字通り部員全員の総合力が試されます。

 

だからこそ、チーム全員で強くなる、強い奴は弱い奴のサポートに回るというチーム力が発揮されます。

 

さて、企業ではどうかというと、「梯子を外す」プレーが散見されました(笑)

まあ、評価がボーナス・出世に繋がるのでしょうがないとは思いますが、飲み会などで「あいつは仕事でできない」などレッテルをはり合うマウンティング&自己防衛は山登りの文化にはない僕の嫌いな時間でした。

 

おいおい、みんなでがんばろうぜ」と思うものの「あれ?なんでこの目標なんだっけ?」とジブンゴト感のない目標にはアドレナリンが出ないというサラリーマン特性の無さを発揮していました。

 

好きな時に、好きな人と、好きな山へ

 

好きな時に、好きな人と、好きな山へ行く」ことこそ、山登りの醍醐味であると先輩から聞きました。好きな言葉のひとつです。

 

配属リスクや上述の通り目標が自分では決められない規模の会社では、おそらく自分の同僚も上司も選べないと思います。

だからこそ、自分がどんな山に登りたいのか、どんな人と登りたいかを考え、しっかりと選ぶ(選べる環境に身を置く)こともときには重要かと思います。

 

おわりに

 

ということで連載第3回では僕が学生時代を費やした山登りと大企業での価値観の違いを個人的に比較しました。

そんなの当たり前じゃん?入る前に知っとけよ」と思われる方も多いと思います。

そうなんです。何も考えず、先輩が行ったから俺も商社に行きたいと自己顕示欲・承認欲求のみで就活に挑んだ僕の無知を反省しています。

 

逆に、そんな僕を採用してくださり、かけがいの無い経験や友人を得る機会を頂けたことにひたすら感謝です。

 

新卒でベンチャー・スタートアップに行くべきか、とりあえず大企業行くべきかの議論に答えはなく、人それぞれだと思いますので、悩んでいる方、書けないような話を聞きたいという方は

 

僕でも㈱meme山浦さんにでもご気軽にご相談ください。

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