みなさん、こんにちは。登山家としての実績がビジネスの世界にどのように還元されるのかを考えるために、3連載を寄稿させていただいている萩原鼓十郎です。
連載2回目は会社を辞めると決断するに至った理由をご紹介します。
前話を読まれていない方は是非そちらもご覧ください。三菱商事を辞めてヒマラヤ未踏峰に挑んだ話やこの寄稿を通して考えたいことが載っています。
→三菱商事退社、人類未踏峰登頂。山登り × ビジネスをどうリンクする?
今、サラリーマンとして働いてるものの「いつか挑戦したい」と思っている熱い想いを抱えながら、決断するタイミングが決められない方の参考になれば幸いです。
なぜぼくが3年目で残業代も含めると額面800万円越えもあり得る万の商社をやめると決意できたのか?
それは商社を辞めてでも行くべきという唯一無二の機会が目の前にあったからです。
では、唯一無二たる所以を分解してみましょう。
その一:自分の体力・気力がアグレッシブな時期は短いと思ったから
登山にはまず体力が必要です。働きながら体力を向上させていくのは大変で、僕も遠征前の一年間は朝出勤前にランニング、週末の多くや連休は学生の合宿に混ぜてもらって山に行っていました。
1年後に遠征へ行くと決めていたので、計画を立て、追い込んでいく事ができましたが、いつ起こるかわからない未来に向けて体力を向上させていくのは難しいのではないかと思います。そういう意味でも、期限を決め計画をつくるために「決断」することが大事です。
実際、遠征では登頂しテントまで帰ってくる日は出発から26時間一睡もせず歩き続けてなんとか下山できました。体力のあるチームだからできる登山でしたので24歳という若くて体力のあるうちに挑んだ甲斐がありました。
体力だけでなく、気力も歳とともにポジティブさを失っていく傾向があるように思います。
当時、結婚もしていなかった僕の決断は「若気の至り」として暖かく見守って頂きましたが、
結婚して家族や子持ちだったり、もしくは、会社にてマネージメントクラスで部下を持っていたりするとまた事情が変わっていたでしょう。
その二:この機会を逃すと未踏峰が他のパーティに登られていたから
僕らが目指した未踏峰登山は文字通り人類がまだ手を付けていないこの時代では考えられないような貴重な山に挑む行為です。一方で、僕らと同じようにその山に登ろうと考えているパーティは世界中にいます。
もし自分たちが成功していなければ次のシーズンに他のパーティが先に登っていたことでしょう。
このように今逃すと今後二度とないチャンスに遭遇した場面では、思い切った決断が必要かもしれません。
例えば、東京オリンピックに向けて鍛錬を積んでいる友人がいますが、似た決断思考かもしれません。
他にも一生に一度の機会だからと男性で1年間育休を取っている方などの決断思考も似ていると思います。
その三:最高の仲間が揃うタイミングは貴重だから
僕たちの未踏峰遠征は3人チームでした。また当時、僕以外の2人は社会人ではなかったので休暇を取る必要がありませんでした。
もし3人全員が大手のサラリーマンだったら(実際に2人は卒業後大手企業に勤務・内定)3人とも会社から休暇の許可をもらえるとは思いませんので、僕一人が決断すればチームが組成されるという状況はある意味好条件でした。
良いチームの条件は意気込みが揃った仲間がいて、金があり(この点に関しては山岳部OBの皆様に御礼申し上げます)、そして自由な時間が重なって初めて完成します。
「はやく行きたいなら一人でいけ、遠くまで行きたいならみんなでいけ」という言葉の通り、未踏峰登山は僕一人では絶対に実現できないものでした。チームの仲間のおかげで達成できた上の言葉通りの体験でした。自分ひとりでは見れない世界があります。
チームや仲間の力は偉大です。
もしあなたの前に途轍もない挑戦に挑む人がいて、あなたをチーム員として招いてくれるなら迷わず加わるべきです。
人が決断する瞬間は貴重であり、優秀な人の決断に立ち会えることは奇跡なのです。
余談:
アマゾン創業者ジェフベゾフが起業する際の決断理由(後悔最小化“メソッド”)は大変参考になります。当時ジェフベゾフは勤めていた会社で副社長まで務めておりウォールストリートの勝ち組でありながら起業を決意したそうです。
もし、挑戦して失敗しても、私は決して後悔しない。
けれど、もし挑戦しなかったら、私は80歳になっても「後悔しているだろう」と思ったのです。
80歳のあなたを想像してみてください。
そのとき後悔は最小限にしたいでしょう?
ほとんどの後悔は自分が怠慢でやらなかったことなのです。
後悔するのは やらないことです。
クラウドワークス副社長成田さんもTwitterで後悔最小化メソッドについて言及しています。
Amazonジェフ・ベゾスの”後悔最小化”メソッド
重要な意思決定の時に「80歳になった時に後悔しないか」を基準に考えるメソッドです
自分も70歳の時に起業家・経営者として、教育家として、スポーツオタクとして、父親として、夫としてどうありたいのかを起点に人生考えてます
少し気が楽になります
— 成田修造(Shuzo Narita) (@shuzonarita) 2018年9月24日
最後に
さあ、想像してみてください。
80歳、もう体は思うように動きません。ひょっとすると病院のベッドの上かもしれません。
人生の最期を待つ日々。
あなたは何を後悔していますか?
今日の決断が未来の後悔を最小化してくれるはずです。
さて、ここまでに、まず連載第一回目では、僕の経歴を出来事ベースでお伝えしました。
今回、第二回目では、決断する際の判断材料を紐解き、山登りに挑む人間の思考回路を共有できたのではないでしょうか。
次回は、最終回では、仕事と山登りを抽象化してその関係性を紐解いてみたいと思います。