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【連載】社会人ラクロス団体SELL立ち上げの狙い、ビジョン、そしてこれから(2/3)

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こんにちは。

前回、 「危機感と五輪への期待」元ラクロス日本代表が綴る、社会人ラクロス団体SELL立ち上げの背景 という記事を寄稿させていただいた元ラクロス日本代表の柴田陽子です。

10年以上ラクロスに関わり続け、さらに社会人ラクロス団体も立ち上げという経験を経て、今回3連載を書かせていただくことになりました。

第一弾では、おもにワールドカップや五輪などを中心に、社会人ラクロス団体SELLが立ち上がった背景について説明させていただきました。

今回は、より入り込んで、SELL立ち上げの狙い・ビジョン、そしてこれからの展望についてお話できればと思います。

 

SELLの始まりと立ち上げの狙い

2017年のワールドカップが終わり、日本国内リーグも落ち着いた頃に、日本代表の主将であった松本(MISTRAL所属)、松本の代表同期の廣瀬(NeO所属)、そして松本の明治大学の一つ下の後輩の寺西(FUSION所属)の3選手が中心となり、社会人ラクロスの環境を変えていきたいという動きがありました。

ワールドカップ当時、松本と廣瀬は社会人2年目、寺西はまだ1年目でした。「10年後の日本ラクロスを担える存在を育てること」をテーマに掲げていた日本代表の佐藤監督の下で22歳以下日本代表時代から育ててきただけあって、3人は2009年にほぼ同年齢であった私とは比べ物にならないくらい高い志と向上心で、4年後のワールドカップ、そして2028年のオリンピックを見据えていました。

 

ラクロスの世界4強国(※)には、それぞれレジェンドのような人たちがいます。

 

※アメリカ・カナダ・イングランド・オーストラリアが世界の4強と言われている。

 

私が2009年に世界と戦ったときに躍動していた中心選手が2017年もまだチームの軸として活躍しており、そして代表の誇りや代表としてあるべき姿を背中で伝えていました。

日本にはそんなレジェンドがいません。10年後、松本や廣瀬や寺西をはじめ、多くの社会人選手が日本のレジェンド的存在になりチームの心臓としてまだフィールドに立っていてほしい。そんな想いから、私と私のFUSIONの同期でラクロスメディア媒体の編集長をしている小野寺でいわゆる面倒な部分を引き受け(笑)、新団体SELLを設立しました。

 

前述したとおり、SELLは「社会人ラクロスの成長と価値向上」のために立ち上げられた団体ですが、チームとして試合に出ることもなければ協会にも所属していません。それはクラブの復活と4年後に進化した社会人ラクロス選手を目指して、各社会人クラブチームもそれぞれで色々と動いてくれているのがここ数年の現状だからです。だからこそ、敢えてラクロス協会外の新団体として立ち上げることで、松本・廣瀬・寺西のように異なるチームに所属する複数のクラブの選手にとって、それぞれが所属する社会人クラブチーム≪+α≫の存在にSELLがなることが狙いです。試合に勝つことや日本一をとるといった目的は一切なく、多くの選手に成長するための練習の場や、社会人として成長するためのきっかけを与えられる活動をしていくことが目的です。

 

Second Era Leaders of Lacrosseという名前には、【ラクロスと仕事を両立している社会人時代】こそが、さらに選手としても人としても成長するチャンスであると捉え、それを「第二成長期 (Second Era) 」と位置付けたという経緯があります。

社会人になるとどうしても伸び悩んでしまうという現状が社会人クラブの衰退、世界におけるレジェンド不在、という日本ラクロスの現状に表れていると思っています。そのような状況を打破するためには社会人選手の成長が不可欠です。女子ラクロス選手がラクロスと仕事の両方で輝けるような社会人時代の成長を支援する。

そして同時に、多くの人に「ラクロスの人はすごい」と認められるロールモデルになることを目指し、ラクロスの価値向上に貢献していきたいと思っています。

 

SELLが創りたい社会人ラクロスの未来

SELLには、以下のミッション、ビジョン、活動目標があります。

 

  • MISSION

“LEAD LACROSEE, LEAD BUSINESS”

 

  • VISION

2028年の五輪大会時のメダル獲得に貢献する

 

  • OBJECTIVE

ラクロスでもビジネスでも活躍し、日本のラクロスを盛り上げる

 

要は、SELLは「仕事とラクロスを両立する」ということの価値をあげたいのです。

ただラクロスで一流になるだけでなく、仕事も頑張るから応援されるし、仕事も頑張るから人としても成長できる。その先にあるのが4年後のワールドカップでの成長であり、10年後のオリンピックで日本中に応援されている中でのメダル獲得だと。

社会人と学生の違いは仕事と両立をしながらやっていることです。その違いをプラスな違いに変えたい。今は両立がどうしても大変だからとか、成長できないからとか、マイナスなイメージも根強く…でも実際は社会人で両立しながらやるからこそ面白い部分もたくさんありますし、私にとってはクラブで出会った仲間は一生の宝物ですし、仕事の面でもどうにかしてラクロスの時間を創りだそうと工夫するからこそ色々な考え方が身に付いて仕事人としても成長できている自分がいます。

 

私がいま勤務している会社はすごく忙しい会社として有名なのですが、それでも昨シーズンは平日週3回教えている大学の練習に行っていました。

会議とか周りとの仕事の連携上どうにもならないこともたくさんありますが、その中でも練習行くためにどうやって効率的に仕事をするかとか、どういう優先順位で何を片付ければ練習にいけるかとか、ラクロスがあるからこそ毎日すごく考えながらやっています。さらに昨年は仕事とコーチに加えてSELLを立ち上げたので、仕事の合間を見てSELLの企画書を作成したり、スポンサー探しをしたりもしていて。

でも、私がそうやって色々ラクロスのことやっているのは周りもわかっているので、会社の方もできる限り練習行けるように会議時間外してくれたり、SELLのスポンサーの方々も皆さん私の会社の最寄り駅まで来てくれたりします。

本当に色々な人に支えられて今の関わり方ができていますが、「応援したい」と周りに思われるような行動を自分がとれることが何よりも大切だと思っています。

まだまだ道半ばですが、SELLを知ることで、そうやって感じて社会人になって仕事が大変でもそれをプラスに捉えてラクロスを続けてくれるような選手が増えて、その選手たちを応援するラクロスファンがその先で増えてくれたら素敵だなと思っています。

 

SELLの活動の今とこれから

SELLの活動には3Kというキーワードがあり、Kyouyu(共有)、Kakusan(拡散)、Koushin(更新)の3つの言葉の頭文字をとった標語です。2018年はまずこの中でも「共有」という項目に注力し、社会人選手がクラブの垣根を越えてそれぞれの技術を共有し共に高め合う場を提供する環境づくりをしてきました。

 

SELLの活動に共感いただいたスポンサー各社様からの活動資金で平日の夜に週1回グラウンドを確保し、そこで所属クラブ関係なくSELLの選手が集まり練習しています。仕事が忙しい選手が残業してからでも来られるよう都内で20時スタートがベースです。2017年の日本代表の佐藤監督とかはよくそこに教えにきたりもしてくれていますね。

それぞれが多忙な毎日を送っている中で、それでも週1回はクロスやボールといった道具に触れて技術を向上できる機会を提供するというのが狙いです。

 

2018年、5年ぶりに全日本選手権決勝でNeO対MISTRALの社会人クラブチーム同士の対決が実現しました。この2チームにはSELLに所属している選手とスタッフが合計20名近くおり、MVPもVPも大変嬉しいことにSELLの選手でした。この2チームの選手も決勝の数日前まではSELLの平日練習で一緒に高め合っていました。

NeOもMISTRALもそれぞれのクラブが様々な新しいチャレンジをした結果がクラブ同士の決勝なのでSELLがどれだけそこに貢献できたかはわかりませんが、NeOとMISTRALの選手が試合後に笑顔でお互いの健闘を称え合っている姿を見たときは本当に嬉しかったです。

 

2019年は、2つめのKである拡散に力をいれていきたいと思っています。1月6日には早速富士通スタジアム川崎で親子体験会を実施し、新しい試みとして川崎フロンターレとのコラボグッズも作成しました。2月と3月には関東以外の6地区への社会人クラブチームとの共同地方クリニックも計画しています。

また、1月16日には私の大学のゼミの同期の助けを借りて選手の技術以外の成長を促す新しい試みをしているJ2水戸ホーリーホックの強化部長をゲストにお迎えしてビジネス側面との両立や仕事面での成長を目指すための勉強会も実施しました。

3月末にもSELLのスポンサーであるmeme様と一緒にビジネス側面からラクロス選手としての成長を促すイベントを企画しております。

今年は選手の技術強化だけでなく、クリニックや勉強会といった形の色々な新しいチャレンジをしながら社会人ラクロスの価値向上にさらに貢献していきたいと思っています。

 

今回はSELLについて詳しくお話させていただきましたが、最後となる第3弾では実際のSELLの選手やコーチをしている大学の青山学院大学の実例を交えて、社会に出ても評価をされるラクロスの魅力を中心に、ラクロスの経験が社会人としてどう活きるか、そしてラクロスというスポーツカルチャーについて語りたいと思います。

 

 

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